若林サンの旅エッセイ、めっちゃ面白かった！
これはぜひおすすめしたい。
目次
中二病・オードリー若林に心惹かれる
オードリー若林のファンだ。
正確に書くと、
エッセイスト若林のファンだ。
オードリーの漫才＆番組も好きだけど、
それ以上に若林の文章が好き。
好きになったきっかけは
『社会人大学人見知り学部 卒業見込』。
若林氏の中二病に
大笑いしながら読むうちに、
共感するところが多すぎて
自分も中二病だと気づいた。
隠れ中二病でした(笑)
自分のイタさに気づいたと同時に
若林ファンになった。
その次のエッセイ
『ナナメの夕暮れ』では
中二病が進化していた。
ほどよく”おじさん”になった若林氏が、
斜めに見るクセを卒業。
社会と向き合って行く。
あれだけバカにしていたゴルフもするし、
「おっさんはホスト」として
ちゃんと周りの空気を読んで盛り上げようとする。
彼は自分自身で、
2つの原因があると分析。
- おっさんになって、
過剰なエネルギーが落ち着いた - 父親の死で、ナナメに生きる時間が
遠回りに感じるようになった
この気持ちにいたる過程で
キューバ１人旅も
大きなきっかけになったらしい。
若林ファンとしては、旅の内容をもっと知りたくなるよね？
「表参道セレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」
キューバ１人旅５日間の記録
2016年の夏、
若林氏は楽園キューバへ１人旅に出る。
それは、灰色の東京からの逃亡でもある。
新自由主義・東京とは違うシステムの国、
キューバで生きる人々を見にいきたい。
それが動機だ。
とはいえ、人見知りの若林。
めちゃ緊張してる
キューバへの１人旅。
不安を隠せない正直さに
親近感が湧いてくる。
そして、キューバに無事ついてからは
陽気な風景への驚きが素直に綴られている。
といいつつ、
「キューバは人も景色も陽気で最高」
そんな単純な旅エッセイではない。
キューバでも、
若林はずっと疑問の答えを探し続けている。
システムが違うと
人間の幸せはどう変わる？
心に残ったエピソードを
覚え書きしてみた。
※ネタバレの部分もあるので、
まっさらな気持ちで読みたい方は
ここからは読まないでください。
キューバ旅行記、
いろいろハプニングが起こる。
まず最初のハプニング。
陽気なはずのキューバ人ガイドが人見知りだった
若林を上回る、シャイなキューバ人ガイドに当選。
人見知りを打破しようとキューバに来たのに（笑）
「人見知り」を
引き寄せる法則が
キューバでも。
ひょんなことから
キューバ人ガイドを笑わせて、
和やかムードに。
旅はそこから動き出す。
革命博物館へ。
恐ろしく集中している男は
どうしたってかっこよく見えてしまう。
革命時のカストロやゲバラは、
男が惚れるかっこよさ。
なぜこんなにかっこいいのだろう？と若林は自問する。
革命兵士たちは「命を使っている人間の目」だ。
日本人である僕は「命を延ばしている人間」の目をしている。
それは「命の使い方」の違いだと。
日本では、『平均寿命まで、平均よりなるべく楽しく生きる』の命の使い方。
こんな命の使い方ができるのは、
先輩たちのおかげだとも。
どちらが偉いとも
決められない。
表参道セレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬。
どちらが自由？
キューバには野良犬が多い。
カバーニャ要塞でも、
野良犬たちは観光客に媚びを売り、
餌にありついている。
おなかがいっぱいになったら、
道にごろんと横たわり昼寝をする。
何不自由ない表参道のセレブ犬と
飼い主にしばられない
キューバの野良犬と
どちらが自由で幸せなんだろう・・・。
キューバの犬は
ミックス犬が多いみたいで、
独特の風貌をしている。
若林は「キューバの犬」の方が幸せだと言いたそう。
私個人はどちらも幸せだと思う。
（犬は自由も大切だけど、
飼い主とのつながりがある方が
幸せだと思いたい。）
第一ゲバラ邸宅にゲバラがいない不思議
観光でゲバラの邸宅に行ってみたけれど、
ゲバラが暮らしていた色や気配がない。
何でだろう・・・・？
若林の推測が面白い。
いつも戦闘服でいたゲバラの写真。
この邸宅で過ごしても、
「定住する」意識がゲバラになかったからだと。
宿泊所に泊まっている感覚だったのかもしれないな。
10万人の観衆は、
カストロのラップに乗ってサルサを踊る
このタイトルがすでにかっこよすぎ。
若林のコピーセンスが鋭い。
カストロは革命広場で10万人の観衆に向けて、
１人で５時間も演説をし、熱狂させた。
しゃべりのプロからすると、
尋常じゃないエネルギーと
エンターテイメントが求められる。
もはやラップだった？！
ラップのライブだったのでは
という推測が面白い。
革命は熱狂だ。
自分が熱狂にほど遠い性格だから、
想像がつかない・・・。
ただ熱狂は気持ちよさそうな予感がする。
闘鶏場とエダジマ（魁・男塾）
若林の旅のお目当てはキューバ独自の「闘鶏場」
闘鶏場にはキューバ顔役のツテで
連れて行ってもらう。
その顔役の風貌が、
魁・男塾の「江田島」にそっくり。
性格もエダジマっぽく暑苦しいことから、
若林氏は「エダジマ」と
あだ名を付ける（笑）
このエダジマがいい人でね、
しかも風貌に似合わぬ弱点もあって、
かわいいのだ。
ごつい顔して、闘鶏が苦手（笑）
確かに･･･
残酷だった
キューバの男性でも
「オレは苦手で・・・」と案内するだけの人もいる。
闘鶏はこわい娯楽である。
キューバの若者もスマホが欲しい。
オシャレもしたい
キューバは社会主義国なので、
食料も衣料品も配給である。
キューバの若者もスマホに憧れ、
海外からのツテで
入手するのが流行である。
アメリカのドラマを見て
「オシャレな服が
配給にあったらしいのに」と
羨ましがる。
新自由主義の日本から
キューバに来たけれど、
”着飾りたい”のは人間の本能なのだと気づく。
元々、良い服が着たい生き物。
元々、良いものが食べたい生き物。
元々、良い家に住みたい生き物。元々、人間は競争したい生き物なのかも。と気づく。
競争をして着飾りたい欲求は
社会システムじゃなくて、
本能なのか。
オシャレをすると元気が出るのは
本能だと思う。
ここまでは、
キューバを自分の眼で体験したような
気持ちになる旅行記だった。
そしてここから続く、
若林氏の独白から意外なストーリーが展開される。
キューバの旅で会話していたのは
「父親」とだった
キューバで
新しい体験をする度に
若林は誰かと会話をしている。
最初は、自分自身と会話をしていたと思ったら
少し前に亡くなった「父親」と会話をしていた。
筋金入りのファザコンのぼくが
世界で一番の味方を失った。
一番の親友を失った。
そういえば、キューバに行きたいって行ってたわね。
父の行きたかった国”キューバ”。
日本の新自由主義のシステムから
抜け出るためだけじゃなく、
キューバに来た理由はそれだった。
ラストシーンの言葉の意味するものは？
旅の最期は、灰色の街東京に飛行機が着陸するところで終わる。
「ピンク、ターコイズブルー、エメラルドグリーン」と唱えるシーンで
旅行記は終わる。
１回読んだときは
この色の意味って何だろう？
とチンプンカンプンだった。
２回、３回と読んで
だんだん意味が分かってきた。
解釈は、読む人によって違うかも。
いろいろ考えるのも
また楽しい旅行記だった。
