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「徴産制」って、なんのこと?
徴産制 | ||||
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聞き慣れないコトバだけど・・・?
日本国籍を有する満18歳以上、
31歳に満たない”男子”すべてに、
最大24ヵ月間”「女」になる義務”を課す制度。
若い男性が女性に性転換することを
義務づける制度である。
あらすじ
時は2092年。
新型インフルエンザの蔓延により
10代・20代女性の85%が喪われた日本。
深刻な人口問題を解決するため、
国民投票により、
科学の力で男性を女性に性転換し、
出産を奨励する“徴産制”の施行が可決された。
性転換の対象者はまず希望者から。
次に無作為に選ばれる。
性転換をした男は”産役男”と呼ばれる。
性転換した産役男5人の物語だ。
エリート官僚の美青年ハルト
性風俗に売り飛ばされるタケル
「仕事のできない夫」キミユキ
全身整形で美女に変身したイズミ
女性になるだけで給料をもらえる。
出産したら、国が丸抱えで育ててくれる。
性転換の期間は2年間。
その間に出産すれば、
こどもは国が丸抱えで育てる。
(自分で育てることもできる。)
2年後には”男”に戻れるし、
女性のままでいたければ
女性の身分も選べる。
給料も出るし、
出産したらホームラン?
いやいや。
便利な制度にみえるけど、
世の中はそんなに甘くない。
女のカラダになったら、
女の悩みもついてくる。
「女性に性転換」と聞くと、
なぜか「若い美女」に
生まれ変わるイメージを抱く。
しかし、田中兆子は甘くない。
このハナシの面白さは「女の悩み」を
男が身をもって体験するところにある。
女の悩み①「ぶさいくな女」はツライ
農家の一人息子ショウマは
オタクでモテない童貞男だ。
カラダは女になっても、
「ぶさいくな男」は
「ぶさいくな女」になっただけ。
さらに「ニセモノの女」という
ハンデもあり、さらにモテない。
ということは、
パートナーも見つからず
売れ残る・・・(涙)
”女”として落ちこぼれた
ショウマは絶望の淵に沈むが
そんな彼女に手を差し伸べたのは、
大阪の「うどん」だった。
これ以上はネタバレだから
書きませんが、
「うどん」は意外でしょ?
読みたくなるでしょ?
女の悩み②「妊娠できない女」はツライ
エリート官僚のハルトは合理主義者だ。
性転換して子供を産み、
国家に貢献した実績をつくる。
ゆくゆくは総理大臣になるのが目標だ。
美青年ハルトは、
性転換すると「美女」になった。
パートナー候補もよりどりみどりで
すぐ妊娠するハズが・・・・
何人とつきあっても妊娠しない。
どうやらハルトは不妊症らしい。
エリート官僚だったハルトは
女として劣等感を感じ、
生きる望みをなくす・・・。
この泥沼から脱出するのだろう?
女の悩み③ 性的搾取の対象になる
フリースクールの教師タケルは、
徴産拒否の生徒の逃亡を助けた罪で
自身もむりやり性転換させられる。
刑務所のような学校で管理され、
やっと卒業したと思ったら、
騙されて「性風俗」に売りとばされる。
「女性」の最もつらい部分、
強制売春まで踏み込んで描くとは
まさか思わなかった。
容赦しない(T_T)
タケルのその後は
綺麗事ではなく、
ヘビーな展開へ突き進む。
女のつらさと強さを
併せもった結末だった。
性別を超えると、
知らなかった世界に気づく。
徴産制は「女の悩みを体感する」ハナシだった。
そして悩みのほかに
「女としての愉しさ」も体験する。
幸せも知ったのだ。
わたしも考える。
わたしが男になったら
どう感じるんだろう。
男のつらさも知るだろうし、
愉しさも体験するのだろう。
男になった女の話も
またどこかで読んでみたい。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
出産にまつわる小説、これも面白かった。