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感想【殺人出産】10人産めば1人殺せる。誰を殺したい?

目次

「殺人出産」村田沙耶香
タイトル通りショッキングな小説

年明け早々、心臓がギュッと震える怖い小説にあたってしまった。

 

10人産めば、1人殺していい(怖)

 

「殺意」が「命の誕生」の始まりになるという社会。

まずは、あらすじ。

近未来、自然に出産する人が減り、政府はその対策に乗り出した。
「産み人」に志願し、「10人出産」すれば、
ご褒美に1人殺人を1人許可する。

適齢期の女性だけでなく、
男性や高齢の女性も
「人工子宮」を装着すれば、
出産が可能。
(注)ただし、人工子宮は体への負担が大きく、
10人産む前に体を壊し死亡することもある。

どうしても殺したい人がいる。
そんな人は「産み人」に志願する。

「産み人」は、社会的に貴重な
赤ちゃんの供給源として
尊敬されている。

主人公のOL「育子」の姉は、
10代に「産み人」に志願。

もうすぐ10人目の赤ちゃんを出産する。

姉には殺人の衝動があり、
合法的に人を殺したいのだ。

殺人が許可されるその日、
姉は誰を殺すのだろうか・・・?

妹のわたしを殺すのか・・?
それとも母を・・・?

 

姉が殺したかったのは誰?
予想外の人物でした(怖)

ヒルネ
ヒルネ
姉の殺す相手を選んだ理由が・・・
めちゃくちゃ怖すぎる。

この小説、背中がすーっと寒くなる(T_T)
クライマックスの殺人シーンは血まみれ。
気持ち悪くて、貧血になりそうだった。

これ以上書くと、ネタバレだから書きません。
興味のある方は、ぜひこの怖さを体験して欲しい。

この社会では、「殺人の衝動」が
「命」を生み出すエネルギーだ。

その事実に気持ち悪さや
後ろめたさを感じながらも、
「産み人」の恩恵を受けて成り立つ社会。

この社会に生きていたら、
わたしは「産み人」を見るたびに
「あの人、誰を殺したいんだろう」と思い
「殺したいほど憎むなんて、何があったんだろう」
と思うだろう。

でも、自分の意見として表明できなくて、
こころの中でヒッソリ思うだけ。
(怖がりで慎重派だから。)

「確実に人を殺したい」とまで、
追い詰められた人の気持ちを想像してみる。

「家族や愛する人を殺された復讐」
・・・なら心理として分かる。
でも実行に移すのは怖い。

さらに怖いのは、殺人を認めてまで、
「種の存続」を優先しようとする
政府の意図だ。

少子化になると、社会が元気がなくなるのは
実感として分かるけれど・・・。

でも長い視点でみたら、
地球上で主役の生物は次々と入れ替わってきた。
三葉虫の時代から、恐竜の時代へ。
今は「人類」の時代だけど、
それもいつまで続くことやら。
そのうち人類も下り坂だよ。

そう思うと、殺したくなるほど
人を憎まずに生きていきたいし、
人類なんて滅んでもいいやん。

そう思って暮らしたい。

短編の「余命」こんな風に死にたい

「殺人出産」だけでもヘビーな短編なんですが、
その他の短編もそれ以上に面白い。
「トリプル」「清潔な結婚」「余命」の3編だ。
備忘録として、それぞれの書評も短く書いておく。

「トリプル」は、3人で恋愛するスタイル

若いコの間では「カップル」よりも、
「トリプル」恋愛が主流の社会。

「トリプル」とは、
私たちが想像する「3P」ではなく、
「3人」で完成する恋愛スタイル。
キスも3人で同時で完成するスタイル。
性行為も同じく3人で完成する。

3人で同時にする「キス」の描写の自然さに
舌を巻いてしまった。
同じく性行為も・・・。

村田沙耶香の想像力、筆力、おそるべし。

「清潔な結婚」で「清潔な繁殖」を。

「こころ穏やかなパートナー」でいようと約束して、性交渉なしで結婚した2人。
最先端の結婚スタイルだ。

「家庭に性行為は持ち込まない」を徹底して、
「クリーン・ブリード(清潔な繁殖)」で
子作りを試みる。

「清潔な繁殖」の課程で、
逆に不自然な行為も生まれる。
その気持ち悪さが、滑稽でもあるけど、
こんな結婚なら面白いかも・・と思うのだ。

「余命」自分で死ぬ日・死に方を選べる

実は「余命」を読んで、「こんな風に死にたいな」と思った。

医療が発達し、この世から「死」がなくなってしまった社会。
「老衰」もないし、死んでも蘇生されてしまうのだ。

そんな社会では、自分でそろそろ死にたいなと思ったら、
死亡許可書を取って、死ぬことができる。

具体的には、こんな感じ。

「蘇生拒否」を役所に届け出る。

●「死亡許可書」をもらう。

「死ぬためのクスリ」を薬局で買う。

●「財産分けなどの遺言処理」をする

●「死ぬ日」を選ぶ

●「死にたい場所」を選ぶ。
主人公は、見晴らしの良い山で
穴を掘って、その中でクスリを飲み、
うとうと気持ちいい感じで・・・・

●「死に方のセンス」は重要。
センスのいい死に方を選ぶと
死後の評価が上がる(笑)

センス良く死ぬためには、
色々手続きがあるからめんどうだけど・・・

わたしは不本意ながら、
「こんな死に方ができるのは
 羨ましい。」と思ってしまった。

ある時点で、「もうやるべきことはやった」と思えれば
「自分で死ねたらいいなぁ」とも思うのです。

あれ・・・?
ダメかな?

今はまだいろいろやりたいことがあるので、
まだ死にたくないけどね(笑)

 

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ヒルネ
ただいまセミリタイア中。 やりかったことをすることで、自分のこれからを模索中。 カゴ編み、ひとりめしを研究中。おばあちゃん犬のシズカと暮らしてます。

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