本が好き

「ばかもの」絲山秋子 ばかだから、しぶとく生きる

最近図書館に週1回ペースで通ってる。
あれもこれも読んでみたい本が多くて、手当たり次第に読めるのが嬉しい。

「ばかもの」絲山秋子は、女性小説家コーナーで見つけて、手に取りました。

冒頭で、おバカな大学生と、きれいだけど口が悪い年上女がいちゃいちゃと
セックスを始めるシーンが面白エロくて、惹きつけられた。

「人のセックスを笑うな(山崎ナオコーラ)」のような、
ほろにがくおバカな年上の女性との恋物語かと想像していたら、まったく違っていた。
もっと切なくて、上手くいかないことばかりの話だった。

【あらすじ】高崎で気ままな大学生活を送るヒデは、勝気な年上女性・額子(がくこ)に夢中だ。だが突然、結婚を決意した彼女に捨てられてしまう。何とか大学を卒業し就職するが、ヒデはいつしかアルコール依存症になり、周囲から孤立。一方、額子も不慮の事故で大怪我を負い、離婚を経験する。全てを喪失し絶望の果て、男女は再会する。長い歳月を経て、ようやく二人にも静謐な時間が流れはじめる。傑作恋愛長編。

冒頭は面白エロいシーンから
明るくはじまったのに、
ヒデは「額子」からヒドイ振られ方をする。
(深夜の公園で、
いちゃいちゃムードになり
ヒデが下半身裸になったら、
そのまま身動きできないように、
木にくくりつけられ、
別れを告げられる。
そのまま朝になって誰かに発見され、変質者!と通報されないために、
ヒデは何とかして、紐を解こうとするのだが・・。
ヒデがどうやって逃れたかは、ネタバレになるので内緒。)

第3者の目線だと「完璧なコメディ」だけど、
ヒデから見たら冗談にもならない悲惨な振られ方。
なぜ額子はこんな別れ方を選んだんだろう・・・?

女の立場から想像してみる。
額子もヒデのことを「ばかもの」と言いつつ可愛がっていた。
本心では別れたくなかったはず。
ただ、自分も結婚適齢期だし(ギリギリ30前)、
性格も良く真面目な相手との結婚を理性で選んだ。

でもヒデと離れがたい気持ちが逆流して、思いっきりひどい別れ方を選んだ。
二度と会いたいと、ヒデも、自分も思わないように。

その後、ヒデは就職して、同年代の可愛い彼女もできる。
仕事もまあまあだし、彼女は優しくて尽くすタイプの子
(額子とは真逆)だし、幸せなはず。

なのに、
ヒデはアルコール依存症になってしまう。
クビになりどん底まで落ちて、矯正施設に入居。
七転八倒の苦しみを経て、なんとかアルコールを断つのだが・・。

アルコール依存症の怖さ、復帰の危うさを
ヒデの自己中心な目線で描いているんだけど、
自己中の目線でも読んでいて出口がなくて、苦しい。

何とか酒を断ち、ヒデは額子のお母さんが営む
おでん屋にたどり着き、額子の近況を知る。
今、額子も幸せではなく、大怪我を負い、離婚して、
遠い山奥に半ば隠れるように暮らしている。
ヒデは山奥までバスに揺られて、額子に会いに行くのだが・・。

普通の人生からドロップアウトした2人が再会するシーンが、
夢も希望もなくて、泣けた。

ヒデのアルコール依存を知った額子はショックのあまり、
荒れに荒れて、一気に髪が真っ白になったのだ。
「派手な色の服を着たババアがいると思ったら、額子だった」
という衝撃的な再会だったのだ。

額子がどれだけ心を痛めたか、この描写でよく分かる。
それに、真っ白な髪で昔の彼氏に会うのも、
勇気がいっただろうなと。
そんなかっこ悪い自分をさらけ出してでも、
昔の彼氏に逢いたい欲望も女心である。
泣ける。

2人はまた定期的に会い、少しずつ新しい関係をつくっていく。
どん底を経験した2人は、もどかしいくらいに、
ジタバタしながら、暮らしを立て直していこうとがんばる。

切なく甘い話を期待していたら、いい意味で裏切られて、
ずっしりと辛く、最後はきゅんと胸がときめいた。

バカでも、大怪我しても、生きていくのが不自由でつらくても、
生きているだけでいいのだ。
じたばたしながら、前に向かっているなら、いいのだ。

読み終わった後で、「今のこの時期に読んで良かったな。」と思えた本。
ばかものだから、生きていくんです。

ABOUT ME
ヒルネ
ただいまセミリタイア中。 やりかったことをすることで、自分のこれからを模索中。 カゴ編み、ひとりめしを研究中。おばあちゃん犬のシズカと暮らしてます。

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