「他人の始まり因果の終わり」は
末期ガンでこの世を去った
ラッパーECDの自叙伝
「他人の始まり 因果の終わり」
一見人を拒絶するような冷たいタイトル。
ところが、これは写真家の妻・植本一子と
こどもに向けて書いた自叙伝だ。
![](https://i0.wp.com/hirunenikki.com/wp-content/uploads/2019/08/kanawanai.jpg?resize=320%2C180&ssl=1)
自らの生い立ち、家族のルーツをたどった本である。
若くして死んだ母、
割腹自殺をした弟、
すべての元凶のようなパワフルな父を描写しながら、
自分の人生を振り返る。
自分の文章を通して、
妻と会話をしようという試みだと思う。
石田さん(ECD)と植本一子さんは
家族の会話ではなく、
文章でお互いの意志を探りあっている。
闘病の日々では
家族の日常を回すことが精一杯。
気持ちの底にある思いを話し合う余裕がない。
「降伏の記録」では、一子さんから
むき出しの本音をぶつけられた。
“石田さんは一人で自立していて、
他人を必要としていない。
妻の自分に向き合ってくれてない。”
なぜ他人を必要としない人間に育ったのか。
その答えが「他人の始まり 因果の終わり」から見えてくる。
わたしは、あとがきの文章が好きだ。
そんな状態の僕だが、最近妙に妻との会話が弾む。
口を開けば僕への小言ばかりだった一時期が嘘のようだ。
あの頃の夫婦仲の険悪さにはさすがに僕も辟易した。
一番ショックだったのは、妻が僕の写真を撮るのを
嫌がるようになってしまったことだ。
・・・・中略・・・・
それがガンになってからというもの、
再び妻は僕の写真を撮るようになったのである。
・・・・中略・・・・
あの時を境に、妻は僕をまた家族の一員と
認めたのだと思っている。
「家族最後の日」に
病院で石田さんとこどもたちを
撮った家族写真がある。
![](https://i0.wp.com/hirunenikki.com/wp-content/uploads/2019/09/ecd_documentary01_fixw_730_hq.jpg?resize=532%2C300&ssl=1)
植本さんの写真は、
素の家族を写しとっていた。
石田さんは家族に向き合ってたと思う。
ただ一子さんに求められたカタチじゃなかったけど。