外出自粛が本格化。
図書館の予約本の受けとりサービスも
とうとう停止になった。
・・・考えようによっては
家の本をじっくり読むチャンスかな。
そうそう(^o^)
よしもとばななだ
2日に1冊のペースで
よしもとばななを
じっくり読んでました。
Amazonによると
よしもとばななの売れ筋ランキングはこうなってる。
#1. LIFE なんでもない日、おめでとう!のごはん。
#2. キッチン (角川文庫)
#3. デッドエンドの思い出
#4. 体は全部知っている (文春文庫)
#5. TUGUMI(つぐみ) (中公文庫)
#6. キッチン
#7. みずうみ (新潮文庫)
#8. デッドエンドの思い出 (文春文庫)
1位がLIFE(料理本)なのは意外・・・。
(料理本の中の短いエッセイだ)
デビュー時の『キッチン』『TUGUMI』は今も人気。
わたしはキッチンも好きだけど、
その後の作品群がもっと好きだ。
・・・ということで
わたしの好きな『よしもとばなな』を10冊選んでみた。
目次
『N・P』近親恋愛と呪われた小説の行方
あらすじ:翻訳家が次々と自殺する短編集
『N・P』は呪われた小説だ。
アメリカで暮らした高瀬皿男は英語で『N・P』を書き、
その後48歳で自殺。
『N・P』の日本語訳に取り組んだ翻訳家はなぜか自殺を遂げる。
主人公「風美」の恋人庄司も翻訳の途中で自ら命を絶った。
5年後、風美は『N・P』の著者高瀬皿男のこどもたちと出逢う。
正妻の遺児で双子の「咲・乙彦」と愛人の娘「萃」だ。
「萃」は不思議な魅力を持つ、狂信的な『N・P』マニア。
風美の所有する未完の98話が狙いなのか、
「萃」は風美の前に姿を現す。
『N・P』読みどころ
刹那的な魅力に満ちあふれ、
天真爛漫かつ無謀な振る舞いに
惹きつけられる。
父・高瀬皿男のヤバい血は「萃」に受け継がれ、
近親恋愛のタブーも衝動的に乗り越えちゃって、
呪われた小説の続きを生きていく。
よしもとばななの小説のラストは
明確に終わるのではなく
“そして人生は続く”という展開が多い。
『N・P』も禁忌の血は続いていく・・・というラスト。
そこも好きだった。
『虹』不倫の恋とタヒチへの旅
あらすじ:タヒチへ恋の傷を癒やしにいく
タヒチレストラン「虹」。
瑛子はフロア係を天職と思い働いていた。
だが母の急死で心身に不調をきたし、
オーナーの家でお手伝いとして臨時で働くことになる。
動物や庭を愛おしむオーナーに対して
妻は無意識に踏みつけにする人だった。
さびしい彼を助けるうちに、
瑛子は自分の想いに気づく。
彼にも「初恋のような一目惚れ」だと告白される。
だが、彼女は思いを振り切るため、
憧れのタヒチに旅立つ。
美しいタヒチで心の曇りをとったあと
瑛子はある決心をする・・・。
『虹』読みどころ
主人公の瑛子も少年のようなオーナーも
純粋でまっとうな人間なのだ。
お互いに好きだけど、瑛子はかたくなに断る。
「どうしてもきみが諦められない。
1回だけやらせて(かなり意訳(^^;))」
と迫るオーナーの求愛行動がストレートすぎて
胸がキュンキュンします。
そして大らかなタヒチの自然の中で
瑛子の心が急に変わる情景にグッとくる。
心が澱んでるな・・・という時に読むと
元気がでる。
“虹”がイチオシです
『チエちゃんと私』妙に心地よい女2人暮らし
あらすじ:不思議なチエちゃんと奇妙な同居生活
イタリア雑貨のバイヤーとして働く私は
7歳下の従妹チエちゃんと暮らしている。
チエちゃんはあまり喋らない不思議な子どもだったが、
ダイヤモンドのような輝く瞳で
小さな頃から私とは気が合っていた。
チエちゃんの母親のお葬式で再会した後、
彼女が珍しく「一緒に住みたい」と意思表示をして
不思議な2人暮らしが始まった。
キレイ好きのチエちゃんは部屋をピカピカにして
窓辺で植物を育て、
おみそ汁だけなぜか毎晩作る。
チエちゃんルールで生きている。
率直で嘘のないチエちゃんとの同居生活は
静かでキレイな時間が流れていく。
ずっとこの生活が続けばいい・・・と願いながらも
少しずつ人生は変化していく。
『チエちゃんと私』読みどころ
わたしは1人暮らし大好き人間なんだけど
ここの部分を読むとうらやましくなる。
チエちゃんがいる生活は、虹色の小鳥がたまたま家の中に迷い込んできて、目の前でパンをついばんでくれているような気分に包まれていた。
もうなにもいらない、いてくれるだけでいい。
こんな風に思える関係は滅多に生まれない。
世間では変わり者・邪魔者扱いをされてしまうチエちゃんと
不思議な縁で巡り会う。
『チエちゃんと私』を読むと、
こういう奇跡を信じたくなる。
現代のお伽噺だ。
『ハゴロモ』サッポロ一番が食べたくなる再生の記
あらすじ
8年という長い不倫の恋が終わった「ほたる」。
ほたるは抜け殻になり、東京から川の流れる故郷に戻ってきた。
失恋の痛みを感じながら、祖母の喫茶店を手伝うほたるは、
なぜか懐かしいと感じる「みつる」に出会う。
どこかで会ったはずなのに、なぜ思い出せないんだろうーー。
誰かを失う心の痛みをゆっくりと癒してくれる、再生の物語。
『ハゴロモ』読みどころ
ハゴロモの魅力は冗談抜きで
みつるが作るサッポロ一番にある。
彼の仕事は、スキーのインストラクター。
家庭の事情で、今は自宅を改造し
臨時でラーメン屋をこっそりやっている。
ラーメン屋といっても、
みつるが作るのはサッポロ一番だ。
メニューは3種類。
①塩ラーメン
②みそラーメン
③ミックス
みつるのサッポロ一番は
もやしたっぷりで卵もついて300円だ。
いいなぁ、
人に作ってもらうサッポロ一番。
美味しかろうなぁ。
わたしが頼むなら
サッポロ一番の塩とみそ、
どちらも好きだから迷うなぁ。
うーん、まずは塩ラーメンにするかなぁ。
・・・なんて頭の中で妄想しつつ、
いまさらながら気づいた。
ミックスって何ですか?
調べてみたら、サッポロ一番をミックスする
ジャンクな食べ方があるらしい。
【衝撃グルメ】サッポロ一番の「しょうゆ味」と「みそ味」と「塩味」をミックスさせて食べ比べしてみた / ダントツ美味かったのは三種混合MIX味!!
知らなかった・・・・。
それはさておき、ハゴロモを読むと
サッポロ一番の”塩”が食べたくなります。
マンガ「昨日なに食べた?」では
ケンジが「みそ」を食べてました。
あれもおいしそうだったなぁ。
ちなみにマンガでは「みそ派」「塩派」に分かれてたけど、
わたしは「どちらも好き派」です。
『アムリタ』サイパンで霊を集める歌を聴きたい
あらすじ
女優を引退した美しい妹が心を病み、死んだ。
姉の私は頭を強く打ち、28年間の記憶を失う。
“半分死んだ”ような状態だ。
そして、記憶が無いままに妹の婚約者・竜一郎と恋に落ちる。
年の離れた弟は急に未来の一部を予知できるようになり、
戸惑っている。
私と弟、竜一郎は自然が美しい場所へ旅をする。
サイパンでは不思議な夫婦に出逢い、
霊が集まる歌を聴く。
無力感にとらわれ、心が闇に近づく時も、
生活の中から輝きがやってくる。きを描ききった。人類を救う永遠の傑作。
『アムリタ』読みどころ
この小説を5回くらい読んでいる。
不思議なのはストーリーをほとんど忘れていて、
毎回新鮮な気持ちで読む。
憶えているのは最初の章で
妹の恋人からビクターの犬が
宅配されてくるシーンくらいだ。
”主人公が頭を打って記憶喪失になったから・・・”からかな。
自分もいっしょに記憶喪失になって
毎回新鮮に感じられる。
手探りで悩みながら、また新しい段階に進むと
日常の中から生きている喜びがやってくる。
スピリチュアル満載の小説なのですが、
なぜか自分に近しいものとして
皮膚にしみいるように読んでいける。
ちなみに『アムリタ』の意味は『神の水』だそう。
そう言われると、『水』のように
自然に体にとけていく文章だ。
今度読むのは何年後かな。
そのときもまた新鮮な気持ちで読めるかな。
『体は全部知っている』みんな変で、面白い
あらすじ
人間みんな少しずつ変なところがある。
辛い時もある。そんなときに流れを変えるのは、
体が無意識に選んだ結果だったりする。
「体は全部知っている」はそんな不思議な瞬間を集めた短編集だ。
『体は全部知っている』読みどころ
13篇の中でおすすめは
「みどりのゆび」「田所さん」だ。
「みどりのゆび」は植物と交感しあうパワーを祖母から受け継ぐ物語。
植物を育てるのが上手な人を「みどりのゆび」といいますが、
この物語では、主人公は庭のアロエを助けることで
世界中のアロエと交歓できるようになる。
アロエの群生と出逢うシーンが圧巻だ。
アロエを見るたびに思い出す。
「田所さんは」は会社にずっといる
妖怪みたいなおじいさん。
「田所さん」は座敷わらしのような存在で
仕事は何もしないけど社員に愛されている。
田所さんのいる会社がうらやましくなる。
淡々とした語りで盛り上がりはないのに、
不思議に心にずっと残っている。
『デッドエンドの思い出』袋小路でも出口はある
あらすじ
「デッドエンドの思い出」
婚約者に手ひどく裏切られた私。実家に戻ると寝込みそうで、
避難先として「袋小路(=デッドエンド)」というバーで
住み込みでバイトをしている。
雇われ店長の西山くんは、子どもの頃親に軟禁された過去があった。
そのせいか、彼は不思議なつかみどころのない自由をもっていた。
恋ではないけど、彼と過ごした時間は予想外の宝物になった。
つらくて、どれほど切なくても、幸せはふいに訪れる。
そんなラブストーリーが集められている。
『デッドエンドの思い出』読みどころ
これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好きです。これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。――よしもとばなな
作者自らが最高傑作と語る『デッドエンドの思い出』
ドラマティックな展開でもなく、悲劇でもなく、ありふれた失恋の話だ。
失恋したらほんとに辛いんだよね
デッドエンドに思えても、道はかならずある。
真理を淡々と書いていて、読み返すと胸が温かくなる。
といいつつ、わたしがこの本で一番好きなのは
スローペースで純情なともちゃんの恋が
5年掛かって成就しそうなところまで来た。
そこで突然よしもとばななの語りが入る。
これを書いているのはともちゃんではなくて、
ともちゃんの人生をかいま見た小説家なのだが、
その小説家も自分が書いているのはなく、
何か大きなもの、ここでは便宜上神様と呼ばれるものに、
頼まれて書いているのだ。
斬新な設定だなぁ・・・と思いながら読み進む。
いずれにしても神様はなにもしてくれやしない。
でもそれは神と呼ぶにはあまりにもちっぽけなまなざしが、
いつでもともちゃんを見ていた。
熱い情も涙も応援もなかったが、ただ透明に、
ともちゃんを見て、ともちゃんが何か大切なものを
こつこつと貯金していくのをじっと見ていた。
神様ってこんな感じ!
神様っているんだけど、絶大な権力はなくて、
ただ見守ってる・・・。
そう感じていたのがここに記されていたので、嬉しかった。
ラストの2行に胸打たれる。
ただ抜き書きしてもその感動は伝わらないと思うので、
興味のある方は『ともちゃんの幸せ』だけでもいいから
ぜひ読んで欲しい。
そう思える短編です。
『すばらしい日々』親を亡くした後にしみるエッセイ
親を見送った後に振り返る
ばななさんの父母は同時期に体調を崩し、
同じ病院に入院していた。
そしてそのまま父が先に逝き、母が亡くなったようだ。
お見舞いに行くときの気持ちを書いている。
父が入院している病院の階段をのぼるときいつも逃げ出したかった。
死にゆこうとしている父に会うのがこわかった
その感覚、同じでした。
わたしも父の病院に行く時、気が重かった。
死にゆく人に会う時は自分をしっかり保っておかないと
あっちの世界に引きこまれそうだった。
それでも、亡くなってから振り返ってみると
父母と最後を過ごしたのは〝すばらしい日々〟だった。
目の見えなくなっていた父・吉本隆明が
血糖値を記した血についた手帳。
死期が迫ってから急に甘党になって
みたらし団子が大好物になった母。
振り返れば発見があり、胸に迫る。
『なるほどの対話』河合隼雄との対談集
河合隼雄とホンネで話した対談集
2005年の対談。
言葉の名手vs.対談の達人と銘打たれた対談集。
30代のばななさんが河合先生に心を開いて
話しているのが印象的。
河合先生の合いの手が心地よくて
心が裸になって話しちゃう感じだ。
いつも眠くて寝てばかりだった高校生活、
強烈な人間ばかりでエネルギーのぶつかり合いだった家族、
「女だからこうしなさい」と言わなかった父、
親友は関西人ばかりなど
ばななワールドにつながるエピソードが読める。
この対談集も何回も読み返している。
読むたびに、「社会から外れても
自分が幸せならいいじゃない」という気持ちにしてくれる。
『Q人生って?』ぶれずに生きていくには
気持ちいいくらいスパッと回答してくれる
ばななさんが読者から人生相談を受ける中で
繰り返し出てくるテーマが取り上げられてます。
世間の常識とは大きく違っているときもあるし、
一見ドライな答えもある。
寄せられた質問はこんな感じ。
Q.こんな世の中で、子どもをまっすぐに育てるには?
この質問はダントツに多いそうだ。
だからか、ばななさんの答えも考え抜かれたように実用的だ。
子どもには「心の開き方と閉じ方」を教えようと。
この答えは、ばななさんの小説に流れる基盤だと思った。
Q.大切な人が自ら死を選んでしまったとき、
遺されたものはどのように心の折り合いをつけたらいいのでしょうか。
ばななさんの小説の中でも、友人が自殺してしまう話がいくつかある。
実際に多くの経験したり聞いたりしているんだろう・・と思えるような
包み込むようなあたたかさのある回答だった。
そのような人生の深淵を覗き込むような相談から、
恋愛のトラブルに関する質問もある。
Q.恋人にお金を貸してと言われたら?
他人に散々お金を貸してきたばななさん。
経験から来る回答が潔くて、スカッとします。
「お金を貸す=別れへの長い道のりの第一歩」とキッパリした答え。
ちなみにお金が返ってきたのは2回だけ。
借りた人は毎月2万円ずつ貯金して、
よれよれの封筒によれよれのお札を入れて
がんばって返してくれたそうだ。
様々な人生相談を読んでいると、
とちょっと申し訳ない気持ちになる。
神経がずぶといこともあって、
悩みがあってもひきずらないタイプだ。
そんなわたしが参考になったのは、この相談だ。
Q.女性が心身の健康を保ちながら社会で働くコツは?
ばななさんの答えが実にイイ。
「てきとう」であることがいちばん大事。
日本の女性は賢くて真面目にがんばりすぎだと。
「もう少してきとうでワイルドになってもいい」
そして
「もらうお金よりちょっとだけ多く働く」のコツだと。
この文章を読んで、肩の力がふぅっと抜けたなぁ。
2009年の本だけど、今読んでもまた新しい視点で
思考ができて面白かった。
恋や仕事や子育てでモヤモヤしているなら
(モヤモヤしてなくても)
心がのびやかになるのでお薦めだ。
改めて、よしもとばななを好きなわけ
よしもとばななの小説に出てくる人は
だいたいフリーランスである。
OL・会社員は少なくて、
モノを作る人だったり、サービスを提供する人だったり、
自分の得意なことで生きていこうとしている。
そして等身大の姿で、悩み悲しみ、
それから自分の喜びを見つけていく。
彼女が書く小説のテーマはいつも決まっている。
(と思う)
自分の幸せは何にあるのか。
それを追究している。
自分の感じる幸せはあの人とは違う。
世間の常識の外に
幸せはあるかもしれない。
ためらわずに探しに行こう。
集中して「よしもとばなな」に向かい合うのは
久しぶりだったけど、
ばななさんは一貫してそれを追究していると思う。