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2020新春「ことのはの宴」に行ってきた
今年も「楽美術館」にやってきました。
まだ2月なのに早咲きの桜が咲いている。
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桜がこんもりと路地の水盤に活けられてました。
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待合にはさりげなく赤い椿のつぼみ。
新春らしい華やかさ。
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新春企画展は「ことのはの宴」
注目した企画展だ
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美術館からのメッセージを要約してみる。
茶道具に欠かせない「銘」は、和歌や俳句から引用されてきた。
萬葉集が成立した頃、日本は「言霊の幸はふ国」だった。
人の一生に起こる出来事を、自然の美しさとともに豊かに表現し、
生きることへの祈りや願いを込めた言の葉を「うた」に散りばめたのです。
それは、萬葉という名にもみることができます。
今回の展覧会では、和歌や俳句などから
「銘」が付けられた作品を中心に展示しております。
楽しんできます!
楽美術館はスマホ撮影OK。
印象に残ったお茶碗を記録します。
16代吉左衛門 赤楽茶碗
現在の楽家当主16代のお茶碗が
最初に迎えてくれます。
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この赤楽茶碗は襲名前の作品。
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正面からは、黒がV字のよう踊ってる。
ザラッとした肌合いと、
赤と黒の景色が大人っぽい。
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左側面は、赤が多め。
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右側は灰色に覆われている。
細かい貫入の肌色が渋くて
若い時にこんな作品をつくっちゃうのか。
1作目からインパクトある展示でした。
2代常慶「黒木」黒楽平茶碗
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お濃茶用の平茶碗。
手のひらをはみ出す大きさ。
側面には段がぐるっと巡っている。
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斜めからみると、沓型にゆがみがあり、
年を経た巨木のような存在だ。
高台にヘラの印もつけられて、野生的な雰囲気だ。
青丹よし 奈良の山なる黒木もち
造れる室は 座せど飽かぬかも
(万葉集)
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3代道入「早梅」黒楽茶碗
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黒々と光るお茶碗に
“早梅”ってどういう意味なんだろう。
・・・と思ったら、雪に負けじと咲く“早梅”を表現した茶碗だった。
雪の厳しさを黒色に、梅の愛らしさを茶碗の丸みに託したのかな。
などと思いながら眺めました。
高台をみると、釉薬がぽってり厚く流れていて、
華やかさがある。
今日降りし 雪に競ひて
我がやどの 冬木の梅は 早咲きにけり
(万葉集)
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4代一入「春霞」赤楽筒茶碗
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春爛漫の柔らかさがほわっと光るお茶碗。
スマホのカメラでは表現しきれない
幸せな桃色でした。
春霞 たなびく今日の夕月夜
清くてるらむ 高松の野に
(万葉集)
5代宗入「水月」黒楽平茶碗
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鉄肌のようなカセ釉。
どっしりとした沓形の平茶碗。
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茶碗の大きさに比べると、
高台は小さくて愛らしい。
水底の 玉さえさやに 見つべくも
照る月夜かも 夜の更けゆけば
(万葉集)
光る月が見えてきそう
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6代左入「横雲」赤楽茶碗
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まっすぐ立ち上がった側面を
スッと横切るヘラの跡。
まさに”横雲”です。
横雲の空ゆ引き越し 遠みこそ 目言離るらめ 絶ゆと隔てや
(万葉集)
7代長入「若松」赤楽茶碗
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若松の絵が華やかな赤楽茶碗。
初春を祝うお茶碗だそう。
白化粧土の若松が繊細です。
厳ろの 沿ひの若松 限りとや 君が来まさぬ うらもとなくも
(万葉集)
元歌は哀しい失恋の歌でした
10代旦入「不二」黒楽茶碗
大胆な富士山が胴にどっかりと座っています。
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去年のお正月は「富士山」がテーマだった。
今年もこのお茶碗に会えて嬉しいなぁ。
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田子の浦ゆ うち出でて見れば ま白にそ 富士の高嶺に 雪は降りける
(万葉集)
元の歌は「山辺赤人」の有名な歌だった。
富士山といえばやっぱりこの歌なんだ。
11代慶入「大空」黒楽茶碗
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光沢のある黒釉をところどころ
掛けはずして、黄ハゲ釉を掛けている。
黄ハゲ釉なんだ
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慶入が今まで使った7つの印を捺している。
7つの印は星だろうか。
大空ゆ 通ふ我れすら 汝が故に 天の川道を なづみてぞ来し
(万葉集)柿本人麻呂
天ノ川をうたったのが元歌だから、
印を星に見立てるのも正解・・?
13代惺入「松風」赤楽茶碗
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松風の字が美しい。
表千家12代惺斎が白泥で書いた文字。
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しみじみと美しい文字でした。
やどにある 桜の花は 今もかも 松風速み 地に散るらむ
(万葉集)
元歌をよむと、“松風”は桜を散らす春の風だった。
なるほど明朗な春の色だった。
14代覚入「綵衣」色釉流水文赤楽茶碗
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中国の素三彩と呼ばれる技法を使い
織り姫の織った「綵衣」を描いている。
流れるような筆使いが
風にたなびく衣のようです。
月草に 衣そ染むる 君がため 斑の衣 摺らむと思ひて
(万葉集)
15代直入「梅一枝」焼貫黒楽茶碗
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ズシッとカッコいい焼貫の黒茶碗。
梅の巨木にぽつっと赤い梅が咲いている。
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含めりと 言ひし梅が枝 今朝降りし 沫雪にあひて 咲きぬらむかも
(万葉集)
銘とお茶碗の関係を想像しながらみていくと、謎解きみたいで面白い。
さて、2階へあがりましょう。
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初代長次郞「萬代」黒楽茶碗
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侘び寂びをきわめた黒茶碗。
利休好みの渋いお茶碗だ。
と思うと、感慨深い。
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黒に、灰色、カーキ、ベージュと様々な色合いが溶けあっている。
写真ではその魅力は少ししか伝わらない。
実物をぜひ見て欲しい。
万代に 年は来経るとも 梅の花
絶ゆることなく 咲き渡るべし
(万葉集)
本阿弥光悦「立峯」飴釉茶碗
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天才「本阿弥光悦」
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火照りを感じるような飴釉の色。
真横と斜め上からでは、飴釉の流れで印象が違ってくる。
柔らかい丸みが手に心地よくなじみそう。
立峯という銘は万葉集の長歌からとられている。
(長すぎて書き写すのを断念しました。)
本阿弥光悦のお茶碗は以前の企画展の時にもウットリと鑑賞した。
どのお茶碗も個性が際立っていて素晴らしい。
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6代左入「桃里」赤楽茶碗
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桃の実のような柔らかいお茶碗。
金継ぎの色と桃色が溶けこんでいます。
春の苑 紅にほふ 桃の花
下照る道に 出で立つ娘子
(万葉集)
12代弘入「蓬莱山文茶碗」
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表千家12代惺斎が蓬莱山の絵を描いたおめでたいお茶碗。
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蓬莱山に、宝珠・注連縄・宝づくしとおめでたいものづくしです。
海原の 遠き渡りを みやびをの
遊ぶを見むと なづさひそ来し
(万葉集)
風流人が楽しむ様子を見ようと
遠く海のむこうから船でやって来たそうです。
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14代覚入「東風」赤楽茶碗
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東の風 いたく吹くらし 奈呉の海人の
釣りする小舟 漕ぎ隠る見ゆ
(万葉集)大伴家持
へらによる削りの跡は、梅が香る“東風”を表す。
肌色は、還元炎による暗緑色に
赤い再酸化した斑点が現れている・・・と解説されていた。
窯変の予測不可能な模様が不気味な美しさだ。
15代直入「去年春」ろくろ茶碗
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ザラザラと渋みのある横顔に対して・・・・
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茶碗の中は、白い釉薬が明るく光っている。
白い梅なのかな。
去年の春 い堀じて植えし 我がやどの
若木の梅は 花咲きにけり
(万葉集)
カッコいいお爺ちゃんのようなお茶碗。
この土は1300年間薬師寺・東塔を支えていた基壇の土なんだそう。
道理で迫力があるわけだ。
次も15代のお茶碗。
先ほどは春のお茶碗でした。
続けては、秋のお茶碗です。
15代直入「秋山乎」ろくろ茶碗
こちらも「ろくろ」造のお茶碗。
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枯れた色合いに、手触りもカサカサしていそう。
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茶碗の中は、ブラウンのようなボルドーのような釉薬がたれている。
二人行けど 行き過ぎかたぎ 秋山を
いかに君が ひとり超ゆらむ
(万葉集)大津皇子を思い、大伯皇女のつくらす歌
二人で行っても越えがたき 秋の山を
どのようにして あなたは一人で越えるのだろう.
孤独なお茶碗に見えてきました。
16代吉左衛門 黒楽茶碗
ラストも16代のお茶碗。
こちらもまだ無銘です。
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つややかな黒釉で光っている。
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高台のまわりは土のままで、
素朴な風合いが残っている。
襲名前につくられた惣吉時代の作品だそう。
お茶碗の縁は繊細な薄さ。
お茶が美味しくいただけそうです。
これで「ことのはの宴」のお茶碗はおしまい。
銘とお茶碗の関連を考える企画展、
面白かったです。
ついついお茶碗に熱中してしまい、
菓子器などまで手が回りませんでした。
といいつつ、この「菊置き茶箱」は別格でした。
11代慶入 菊置茶箱のとりあわせ
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黒楽菊起上小茶碗・赤楽小茶碗と、お茶碗も可愛いサイズ。
茶入れは、瀬戸耳付き。
丸っこい形でなじみます。
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ポスターでとりあげるくらい
新春らしくて華やかな茶箱でした。
こちらで企画展の記録はおしまい。
愉しい経験だった
虎屋菓寮で「歌」のお菓子をいただく
美術館の後は、虎屋のカフェによりました。
薄茶セットを注文。
練りきり・きんとんは売り切れだったので、
薯蕷饅頭にしました。
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梅と鶯の焼き印で、春待ち気分。
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お題は「歌」
万葉集にちなんだお茶碗の銘を楽しんだ後に、
ぴったりのお菓子でした。