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「ここは、おしまいの地」こだま 自虐的なクセにキレッキレの笑いがたまらない

目次

「夫のちんぽが入らない」で話題になった
「こだま」の自伝的エッセイ。

 

こだま 講談社 2018年09月14日
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「夫のちんぽが入らない」を読んだときは、
予想よりも純粋で真摯な
ノンフィクションに驚いた。

どちらかというと、
エロ系エピソードを期待して
読んでみたら
大きく予想を裏切られた。

文字通り最初から
兄と妹みたいに
寄り添って生きる夫婦。

ヒルネ
ヒルネ
現実は、あたしの常識を
軽々と超えている。

「ここは、おしまいの地」は、
「夫のちん~」に続く
自伝的エッセイだ。

自虐的なクセに最後はキレッキレの笑いが生まれる
「こだまサン」のルーツが見える

 

こだま 太田出版 2018年01月26日
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「こだまサン」はスーパー「ドM」で自虐的だ。

家族や友達にけっこうキッツいことを
を言われっぱなし。
受け身の姿勢で、激しい嵐が通り過ぎるのを
ひたすら待つ。

でも、その生きてきた歴史が
すでに壮絶な嵐なのだ。
「不運」のエピソードがてんこ盛りだ。

こだまサンの不運の歴史

ヒルネ
ヒルネ
夫のちんぽが入らないことも、
かなりの不運だと思うけれど、
こだまサンの不運の歴史はもっと深い。

狂気がかった雷オバサンとよばれる
母から、怒鳴られながら育つ。
ビクビクしながら、
自分が悪いんだ・・と思い込むように。

肺炎を放置されたため、
結核の親戚みたいな肺の病にかかる。

顔のホクロを
「うんこのシミ」と言われ、
学校で男子にいじめられる。

中学の卒業文集で
「早死しそうな人」
ランキングで1位になった。

念願の教師になるも、
学級崩壊でココロを病み、
教師を辞める。

教師の夫も
教育熱心なあまり
ココロを病み、
仕事を休みがちになる。

「転んだら死ぬ」状態まで
首が悪くなり、
大出術を受ける。

信じられないくらい
大便の匂いがしみついた
クサイ家に転勤で住むことに。

まだまだありますが、
とにかく、不運のオンパレードである。

たくましい関西人のアタシは
最初こう思っていた。

ヒルネ
ヒルネ
言われっぱなしやから、
不運が集まってくるんやで。
もっと反撃したらええのに~。

読み進めていくうちに、
それは違うと気がついた。

この不運のオンパレードがあるから、
こだまサンならではの
キレッキレの不気味な笑いがあるのだ。

「何もない」ことをさらけ出していけばいいじゃないか。
恥ずかしい思いこそ書いていくべきではないか。
洗練された街、文化的な家庭、健康的な心身、コミュニケーション能力、運。
そのどれもがない。
「欠けている」ことがわたしの装備だと気が付いた。
自分の見てきた景色や屈折した感情をありのままに書けばいいのだ。
「おしまいの地」は「おもしろの地」。
そう考えると閉ざされた集落や家族にも愛着が湧いてきた。
あとがきより

 

静かな狂気をはらんだすれすれの笑い。

これを書ける人は希少価値だ。

こだまサンのすごいところは、
不運に遭いながらも、
面白がれる視点だ。

アタシなら、家族や世間を恨むところだが、
こだまサンは、一周回って
笑いに替える強さがある。

物書きの性として、
腹の据わり方が半端ない。

この境地に達した
こだまサンの
次の本も愉しみだ。

エッセイの題名も自虐的でそそられる

 

ヒルネ
ヒルネ
題名を見ているだけで
どんな不運エピソードなのか、
想像を掻きたてられますな・・・。
  • 父、はじめてのおつかい
    雷おばさんの晩年
    ふたりのおばさん
    私の守り神
    ここは、おしまいの地
    金髪の豚
    川本、またおまえか
    モンシロチョウを棄てた街で
    春の便り
    先生のうわさ
    巻き込まれの系譜
    穂先メンマの墓の下で
    偽者

    言えない
    すべてを知ったあとでも
    いちご味の遺品
    春の便り、その後
    首に宿る命
    父のシャンプーをぶっかけて走る

ヒルネ
ヒルネ
アタシは、いぢめっこの
「川本またおまえか」の
ラストが好きだ。

特設ページで、今なら立ち読みできます。
「川本またおまえか」

 

「ここはおしまいの地」が好きな人はこの本も好きそう

 

この本を読みながら、
この狂気すれすれの笑いがこの本に似ている・・・と思い出した。

「まんしゅう家の憂鬱」
この本もキレキレの面白さで、
アタシは腹を抱えて笑いました。
いろんな人におすすめしたんだけど、
なぜか誰も興味を示してくれなかったんだよね・・・。
さみしい・・・(T_T)

気になる方はぜひ(^。^)

まんしゅう きつこ 集英社 2017年11月17日
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ヒルネ
ただいまセミリタイア中。 やりかったことをすることで、自分のこれからを模索中。 カゴ編み、ひとりめしを研究中。おばあちゃん犬のシズカと暮らしてます。

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