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イギリスの底辺保育園からのレポートはパンクだ
パンクなノンフィクションにぶちあたった。
現場は、幼いこどもたちが預けられる
イギリスの保育園。
幼いこどもたちが集まる場所なれど
ヘビーなエピソードが満載。
だって、ここの保育園は
無職者・低所得者支援センターへ
通う親のこどもが対象だから。
こどもたちの親は
英語が喋れない移民か、
アンダークラスだったりだ。
アンダークラスとは、
生活保護を受けている層。
ドラッグ中毒の過去がある
シングルマザーが多い。
移民の親は勤勉で上昇志向の強いタイプが多く、
スパルタ式育児がしばしば登場。
それが児童虐待と見なされ、
最悪こどもを取り上げられることもある。
アンダークラスの親は
育児にまで手が回らず
空腹だったり
虐待を受ける子もみられる。
そんな子たちは
邪悪なまでに凶暴に荒んでいる。
野獣児だ（笑）
こんな厳しい状況の中で、
保育園を無事卒業する子は少なく･･･
急に来なくなるケースも多い。
姿を消すのだ。
（ソーシャルワーカーにこどもを取り上げられ
里親に出されたと推測される。）
保育士の著者は
壊れたイギリス「ブロークンブリテン」の
厳しい現実を
野獣児を通して肌で感じつつ、
反骨精神をもって書き記す。
こんな生々しいレポート、
明るい話は少ないし、
こどもたちが不憫だし、
でも惹きつけられる。
カオスのなかから
わずかな希望が顔をのぞかせるからだ。
元不良少女、保育士として里帰りする
アンダークラスの親に
育てられた子は
思春期にぐれ、
すぐ妊娠して、こどもができて・・・
またアンダークラスの若い親になる。
それが王道のパターンだ。
その中でまれに、
保育士として帰ってくる
元不良少女がいる。
ベネロペ･クルスも真っ青な
ラテン美女のロザリーだ。
彼女は元不良少女だけあって、
邪悪な野獣児(笑）の気持ちが
よく分かる。
ロザリーが友だちの首に
噛みついた野獣児アリスに
かけた言葉が壮絶だ。
アリスは凶暴な振る舞いを他のこどもにするが、
母親から虐待をうけている。
大人に叩かれ慣れているから
大人が手をうごかすと
叩かれると反射してしまうのだろう。
ロザリーはアリスに言い聞かせる。
「アリス、そうやってこわがるのもやめなさい」
「そうやってびくびくすると、
それが気に障ってもっとあなたを
叩きたくなる人がいるから。
叩かれたくなかったら、堂々としていなさい」
「とても難しいことだけど、ずっとそう思って
そうできるようにしていると、
そのうちできるようになる」
年端のいかない子どもに向かって
壮絶な教えである。
ロザリーは自分がヘロイン中毒の母親と
刑務所帰りの父親に育てられた実体験から
学んだ生きる術をアリスに伝えたのだ。
叩かれたくなかったら、
堂々としてなさい。
ヘビーでパンクな教えだけど、まさに真実だ。
イギリスでもそうだけど、
日本の社会でもそうだ。
堂々とすることで
手強いぞと思わせる。
付け入る隙を無くし、
自尊心を守るのだ。
むつかしいけれど。
ブレイディみかこの文章は
現実を切り取りながら、
こどもたちの未来まで
見つめて祈りを込めている。
ブレイディみかこって、
どんないきさつがあって
イギリスで保育士になったんだろう。
彼女のプロフィールを
読んでなるほどなぁ･･･でした。
ブレイディみかこ 白紙の答案に注目、物を書けと言ってくれた先生がいた
いま保育園でパートで働いているから
たまたま巡り合ったイギリスの保育園レポート、
衝撃でした。
次は、ブレイディみかこの1人息子が主人公のノンフィクション
『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』を読む予定。
