目次
楽美術館 秋期特別展「魂を映じて」
京都の隠れスポット(わたしが勝手に思ってる)
楽美術館にまた行ってきた。
重要文化財級のお茶碗を
人の少ない美術館で
じっくり鑑賞できるのだ。
秋は楽歴代の「魂」にフォーカスした特別展だった。
特別展のメッセージはこちら。
(HPから転載しました。)
秋期特別展 樂歴代 魂を映じて
人にはそれぞれ「Ages(世代)」を通して
伝えるべき大切なものがあるはずです。
それは人から人へと形を通じて
受け継がれていきますが、
それは単なる宝物ではありません。
形の中に宿り、形を超えた何か、心?情感?思想?
それを仮に「The Soul(魂)」と致しましょう。
皆様にとって「The Soul」とは何でしょうか?
本展は樂茶碗の中に大切に受け継がれてきた
「The Soul」に焦点をあてた展覧会です。
450年にわたり貫かれてきた「The Soul」。
また、時代の中で新たな創造性を
導いてきた「The Soul」。
茶の湯の創造精神は「守・破・離」と申します。
また、仏典『金剛般若波羅彌陀経』には
「応無處住 而生其心」とございます。
日本文化の底流にある「The Soul」を
感じ取って戴ければ幸いに存じます。
450年続いた「The Soul」を
感じにいきませう。
現在の16代吉左衛門のお茶碗がお出迎え
2019年7月に襲名したばかりの
16代のお茶碗がトップバッターで登場。
16代吉左衛門 黒楽茶碗
当代の吉左衛門が襲名する以前、
惣吉を名乗っていた2012年に
焼き上げた黒楽茶碗。
ツヤツヤの黒釉に
赤茶が混じっています。
落ち着きの中に
フレッシュな若さもうかがえる。
楽家の決まりは
「前の代の作風は継承しない」
自分の釉を創りあげるため
1人で取り組むそうです。
父親も誰もメソッドを教えてくれない。
自分の釉、魂を見つけるまで
孤独な時間を過ごすのだなぁ。
襲名の2年後・2021年に、
16代としてのお茶碗を発表するそう。
今から楽しみです。
2代・常慶から、表現は大きく変化する
2代・常慶 黒楽茶碗
沓形に歪んだ大ぶりの黒楽茶碗。
濃茶がたっぷり点てられる大ぶりの茶碗。
初代「長次郞」は小ぶりなお茶碗を造っていました。
楽焼きの作風2代目常慶で大きく変わる。
利休の死後、古田織部の茶風が広まった慶長・元和時代。
時代の好みは力強く動きのある表現が
好まれた時代。
江戸時代初期の有名大名が
このお茶碗で濃茶を喫したのかな
と想像するのも愉しい。
3代目に天才「道入」が出現
2代目で大きく変化した楽焼は
息子の3代・道入の出現でさらに進化する。
3代・道入 黒楽茶碗 銘:青山
重要文化財の黒楽茶碗が登場(^^)
つややかな黒釉に、抽象的な文様。
モダンです。
文様や銘「青山」の意味は
書かれていないけれど、軽やかな進化を感じます。
3代・道入 筆洗形黒楽茶碗 銘:花橘
なんだろう?
江戸初期に流行した文房具
「筆洗」の形をとりいれた
ユーモアのあるお茶碗です。
当時の筆洗は口縁の切り込みで
水で洗った筆をしごいて水気を抜いていた。
その形を真似た遊びごころが洒落ている。
外側はつややかな黒釉、
内側は細かな貫入がみえる。
外側と内側のギャップも面白い。
今回一番好きなお茶碗はこれでした。
3代・道入 赤楽筒茶碗 銘:破れノンコウ
破れノンコウとは
”紙のように薄くて破れそう”という意味の銘。
ノンコウとは、3代目の渾名です。
渾名を銘にするあたり
よほど有名だったのね。
間近でみるとほんとうに
薄造りの筒茶碗。
青山とも、筆洗形とも作風がまったく違う。
1つの型にしばられない才能。
天才とはこういう人なのか。
箱書きにも「ノンコウ」の文字がはっきりと読みとれる。
「ノンコウ」の由来は諸説あるそう。
千宗旦が道入に花入れを贈り、
これに「のんこう」(乃無己かという)と
銘したからという説。
江戸時代初期の男性の髪形に
「のんこ」があり、
それに関連していた説も。
当時、道入を訪問するのを
「のんこう」へ行くと言ったくらい
有名だったようだ。
6代・左入 花のように美しい赤楽茶碗
6代・左入 赤楽茶碗 銘:毘沙門
ほの暗い美術館の中で
ポッと灯りがともるような
温かい桃色の肌。
楽美術館のインスタでは
落ち着いた肌色にみえる。
照明や角度によって
肌の色が変わり、
見る度に新しい発見がある。
天才「本阿弥光悦」は楽家と仲良しだった
本阿弥光悦 白楽茶碗 銘:冠雪
書や漆芸で天才的なデザインセンスを
発揮した本阿弥光悦。
そんな光悦がお茶碗を造ると、こうなる。
モダン・・・♥
頂の雪が柔らかい白で表現されている。
よく観ると、白釉の肌もプツプツと
泡立ち、文様も読みとれる。
本阿弥光悦は3代・道入と懇意だったそう。
この茶碗も道入の釉薬を借りて、
楽家の窯で焼いたものだ。
天才同士の交流で
バチバチと刺激しあってたんだろう・・と勝手に想像するのも愉しい。
このお茶碗、以前の特別展でも拝見しました。
その時も感動したけど、今回観ても感動は新ただった。
15代・直入がフランスの新風を吹き込む
つい最近まで吉左衛門だった15代・直入。
彼はフランス留学で
いままでにない作風を確立する。
15代・直入 焼貫黒楽茶碗 銘:吹馬
黒楽、赤楽、白楽が主流だった茶碗に
装飾を持ち込んだ。
このお茶碗は
唐の詩人李賀の詩にちなんでいる。
日は西山に没し、
東の山はすでに暗闇の中。
突如つむじ風が吹き、
馬舞い天に駆け上がって
雲を踏み、
幽かな残照の彼方に消えていく。
ドラマチックでアバンギャルドな
父・直入に対して、
16代はまったく違う作風になっている。
本格的な活動が愉しみです。
お茶碗以外の可愛らしい名品も楽しみだ
12代・弘入 鶴食籠
丸まって座る鶴がこんなに可愛らしいとは。
大きさは横幅30㎝くらいで
しっかりと大きい。
「食籠」と銘があるので、
この中に果物などを盛って
来客をもてなしたのでしょうか。
この愛らしさ・・・どこかで観たような?
あー。
フィンランド陶芸のミハエル・ハルキンの動物たちに似ています。
7代・長入 緑釉象香合
こちらは手のひらにのる大きさの
象の香合です。
目を細めて寛いでいるような
ゆったり感です。
7代の長入は面白い小物を
造るのが好きだったのか
ユニークな蓋置きがありました。
こんな風に柄杓を置く
蓋置きなんですが・・・
7代・長入 緑釉一閑人蓋置
ほら、蓋置きにしがみついている
「閑人」が1人・・・(^o^)
閑人といいながら、
後ろ姿も一生懸命。
18世紀のコップのふちこさんでしょうか。
小さな蓋置きの面白さにほっこりします。
こんあ予期せぬ愉しみに
出会えるから
やっぱり展示会に行くと面白い。
楽美術館は御所の近くにひっそりとある
楽美術館へは 地下鉄烏丸線「今出川」駅から
歩いて11分。
楽美術館のお隣は
楽家のお住まいです。
ここで年に数回、
お茶碗を焼いてはるようです。