こんにちわ。ヒルネです。
今回は「むらさきのスカートの女」
不思議なストーカー小説についての感想です。
目次
”むらさきのスカートの女”と友だちになりたい
あらすじ
〈わたし〉は”むらさきのスカートの女”が気になって仕方がない。
〈わたし〉は彼女と「ともだち」になりたいのだ。
こっそり尾行をして、自宅も知っている。
どうやら、彼女は現在無職みたいだ。
わたしは“むらさきのスカートの女”を
自分と同じ職場で働きだすように誘導した。
めでたく彼女は採用されたのだが、
〈わたし〉は話すチャンスがない。
はたして、〈わたし〉は彼女と「友だち」になれるのか・・・?
ぶっちゃけていうと、
ストーカーの目線で見た記録小説である。
むらさきのスカートの女は変なヒトなのか
読み始めは、”むらさきのスカートの女”は
妖怪っぽい存在に描かれている。
ところが、ストーリーが進んでいくと
”むらさきのスカートの女”が
だんだん普通のヒトに思えてくる。
ややコミュ障の傾向があって、
人付き合いが苦手だけど
素直なヒトみたい。
変なのは、彼女をストーキングする〈わたし〉の方だ。
〈わたし〉は”黄色いカーディガンの女”を自称し、
むらさきのスカートの女をずっと見守っている。
彼女と「ともだち」になって、
どんな関係になりたいのか。
なぜ彼女に心惹かれるのか。
その謎は一切明かされない。
ただただ、彼女の行動をチェックして、
話し掛ける隙をうかがっている。
状況だけ見るとこわいのだけど、
具体的に危害を加えるわけではない。
見守ってるだけだ。
〈わたし〉にとって、
”むらさきのスカートの女”は
なんだろう?
この本のテーマはここかな。
文章から感じたのは、
〈わたし〉の”むらさきのスカートの女”への戸惑いだ。
〈わたし〉は
”むらさきのスカートの女”を
”自分の分身”だと思ってる。
自分の分身だから、
話しかければ「ともだち」になれると信じてる。
そして、自分の分身なのに
何で〈わたし〉の思い通りに動かないんだろう?
そんな思いで、〈わたし〉は終始戸惑っている。
思い通りに動かない彼女に
戸惑いを感じつつ、
毎日のストーキングが彼女の生きがいだ。
ストーリーが進むと
“むらさきのスカートの女”は自信をつけて
どんどん最初の予定よりも
予想外の方向へ突っ走ってしまうのだ。
そこがなかなか爽快で、
ストーカー小説の不気味さよりも、
思い通りに行かない人生のおかしみが味わえる。
表紙の”水玉のスカートの女”の謎
タイトルは「むらさきのスカートの女」なのに、
表紙は「水玉のスカート」だ。
しかも2人の女が1着のスカートをはいている。
この表紙の印象から、
〈わたし〉は“むらさきのスカートの女”を
自分と等しい存在だと思い込んでいる気がしたのかな。
続けて感じたのは、
むらさきのスカートの女は
実はむらさきのスカートなんて着ていないのでは?
〈わたし〉の中で、
むらさきのスカートをいつも着ていると
勝手に妄想してるのでは?
だから、水玉のスカートなんじゃないか?
などと私も想像をふくらませてしまうのだった。
だって、装丁には著者の思いが表れるはずだもの。
装丁と小説の関係を想像するのも面白い。