本が好き

「掃除婦のための手引き書」ルシア・ベルリン アメリカ版”家政婦は見た”はヒリヒリと哀しかった

“掃除婦”と“エリザベステイラーみたいな美人”
ミスマッチな表紙が目をひく。

ミステリアスな題名に惹かれて
翻訳者を確認したら、「岸本佐知子」さんだった。

岸本佐知子さんの翻訳する小説は
選び抜かれた面白さ。
どの話もクセのある面白さで
いつも新しい世界を教えてくれる。

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「掃除婦のための手引き書」は
そんな岸本さんが惚れ込んだ短編集。
ベタ惚れのエピソードはこちら。

岸本佐知子&山崎まどかが「とにかくすごい」と語彙を失うルシア・ベルリンとは何者か

魅惑的な表紙の美人は
著者ルシア・ベルリンだった。
彼女は自分の人生から自伝的小説を残した。

彼女は北米の鉱山で幼年期をワイルドにすごす。
その間に祖父と母から虐待を受けていた。
その後南米のチリで“上流階級のお嬢様”として
何不自由なく育てられる。

大学在学中に結婚。
その後3度の結婚と離婚を経験。
シングルマザーとして4人の息子を育てる。
”掃除婦”高校教師“”電話交換手“”ERの看護師“として働きながら、
長年“アルコール中毒”でもあった。

長らく無名の作家であったが、
アルコール中毒から脱し、
コロラド大学の准教授となり創作を教える。
2004年に68歳で死亡。

2015年に短編集が刊行され、
再発見された。

社会の底辺から上流会まで
両極端を体験した珍しい女性だ。

底辺社会の残酷さを舐めながら
自分のおろかさをも笑い飛ばす。
希望がなくても、生き続ける。

絶望を知らないしぶとい短編集だった。

「掃除婦のための手引き書」
アメリカ版“家政婦は見た”
掃除婦は何でも知っている。

個人の家庭を訪問する「クリーニングウーマン=掃除婦」の物語。
彼女は7軒以上の家庭を尋ね掃除をしながら、
家庭の秘密も知る。

病気で忘れっぽいジュセルさんの家庭はこうだ。

夫は弁護士で、ゴルフをして、愛人がいる。
ジュセルさんは知らないが、知っていても忘れている。
掃除婦は何でも知っている。

秘密をなんでも知っている。

ヒルネ
ヒルネ
まさにアメリカ版「家政婦は見た」だ(^^;)

ぎょっとするような大胆な告白もある。

掃除婦が物を盗むのは本当だ。
ただし雇い主が神経を尖らせているものは盗らない。
余りもののおこぼれをもらう。

ヒルネ
ヒルネ
・・・じゃあ、何を盗る?

<スパイス・アイランド>のゴマをひと瓶盗んだ。
忘れっぽいジュセルさんの家には
15瓶もゴマがあるから。
1瓶くらいなら気づかれない。

ゴマ以外に盗んでいるものがある。
睡眠薬を盗んでコツコツ貯めている。

手元にはいま、ジュセルさんバーンズさんマッキンタイアさん
ホルヴィッツさんの家から集めた睡眠薬が、ぜんぶで30錠ある。

彼女は亡くなったダメ夫との約束を覚えてて、
にっちもさっちもいかなくなった時のために
睡眠薬をコツコツ集めている。

ヒルネ
ヒルネ
睡眠薬を集めることが
生き続ける理由になっている。

別の短編「喪の仕事」では
彼女は死んだ人の家を掃除し、
形見の品を遺族に手渡す仕事もしている。

形見の品で遺族を喜ばせようと
この時の彼女は優しく話す。

日本の「家政婦は見た」とは違って
彼女はぶっきらぼうで、
哀しくて・・・
絶望してるけど優しかった。

「どうにもならない」
アル中のシングルマザーの物語

ルシア・ベルリンの短編はすべて
パンチが効いてる。

なかでも「どうにもならない」は
アル中患者がお酒を渇望する描写が
リアルで、自分がアル中になった気分になった。

ヒルネ
ヒルネ
わたしは下戸なんだけど、
文章が切実すぎて、アルコールを求める
カラダの声が聞こえてきました

朝の四時、主人公のシングルマザーは
体が震え過呼吸がはじまった。
お酒を飲まないと幻覚が見え、
心臓発作を起こすに違いない。
髪も目玉も骨も痛い。

朝の6時になるまで
酒屋は開かない。
家中の小銭をかき集め
4ドルつくり、酒屋まで歩く。

やっとお酒を買ってからの
アル中ならではの飲み方が
ユニークだ。
まずクランベリージュースで割って
チビチビ飲む。

ヒルネ
ヒルネ
アルコールを優しく
体中にしみわたらせる飲み方だ

アルコールで死の恐怖から逃れ、
気分が良くなってから
彼女は息子たちの服を洗濯する。

長男は「ママがお酒をまた飲んだ・・・」と
気づいて憂鬱になる。

そしらぬ顔でママは
息子たちに朝食を食べさせ
学校行きのバスに乗せる。

ヒルネ
ヒルネ
アルコール中毒と
ママの顔のギャップがありすぎだ。

そしてラストの1行で
ガツンとやられた。

ヒルネ
ヒルネ
アルコール中毒って奴は!

教訓。
アル中を信用してはならない。

どの短編もヘビーな現実がてんこ盛りで、
辛いことばかりなんだけど、
思いがけない切れ麗しい文章に
ハッと驚かされる。

短編集のタイトルが詩的。
そして想像を超える結末が待っている。

タイトルの言葉選びもパンチが効いている。

タイトルから想像される
イメージとはまったく違うストーリーが展開する。

  • 星と聖人
  • わたしの騎手
  • エンジェル・コインランドリー店
  • セックス・アピール
  • ティーンエイジ・バンク
  • さあ土曜日だ
  • 巣に帰る

ほろ苦く暗くて、
救いのない話が好きな人にオススメです。

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(おまけ)
日本のドラマ、「家政婦が見た」は最初はブラックユーモアだった。

「家政婦は見た」第1話から観た。初回は悪女。最終回は人情おばさんになってた。「家政婦はみた」全25話 初めて観ました 市原悦子は好きだけど、 代表作の「家政婦は見た」は観てなかった。 なんとなく...

 

ABOUT ME
ヒルネ
ただいまセミリタイア中。 やりかったことをすることで、自分のこれからを模索中。 カゴ編み、ひとりめしを研究中。おばあちゃん犬のシズカと暮らしてます。

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