【感想】｢罪の声」犯罪に利用された子供たち。今どこで生きているのか。

グリコ・森永事件の記憶がよみがえる

グリコ・森永事件で世間が騒然としていた頃、わたしは小学生だった。

関西に住んでいて、
関西のスーパーに青酸入リのお菓子がばらまかれた。
身近な犯罪だった。

グリコのお菓子はスーパーから姿を消した。
グリコは倒産寸前まで追い込まれた。

連日、怪人21面相の脅迫状、
キツネ目の男の似顔絵が新聞に載った。

無表情なつり目の男の眼差しが
子供心に怖かったな。
今でもありありと覚えている。

リアルタイムに犯罪の進行を見守っていたせいか、
グリコ・森永事件のことは
細かいところまで覚えている。

身代金の支払い指示が
カセットテープに(笑）
「子供と女性の声」で吹き込まれていたのも
印象的だった。

音声分析の専門家が
子供の年齢を推測したり、
方言のイントネーションで
こどもが育った地域を絞り込んでいた。

「罪の声」では「ギン萬事件」と名前は変えているけれど、
犯罪の具体的な中身は「グリコ・森永事件」そのままだ。

罪の声・あらすじ

京都でテーラーを営む曽根俊也は、
ある日父の遺品からカセットテープとノートを見つける。
テープを再生すると、自分の幼いころの声が聞こえてくる。
それは、31年前に発生して未解決のままの
「ギン萬事件」で恐喝に使われた録音テープの音声とまったく同じものだった――。

事件に巻き込まれた『曽根』は
父親の親戚を疑う。
当時を知る人達に聞き込みをはじめる。

一方、文化部の新聞記者・阿久津は
社会部の鬼デスクから
当時イギリスにいた日本人が｢ギン萬事件」の計画を
立てたという噂を検証せよと命令される。

新聞記者『阿久津』はイギリスへ飛び、
謎の日本人を探す。

小さな疑問から未解決事件の謎が少しずつ
解けていくのだが・・・。

テープの声のこどもは3人。
他のこども2人は今どうしているのだろう。
平穏に暮らしているのか。
いやいやいや、幸せな訳はなかった。

ヒルネ

ネタバレになるから
詳しくは書かないけど、
犯人とこどもたちにたどりつくよ。

あのテープの「こどもの声」が再現されている

この小説のために
テープの音声が再現されている。

当時のことを思い出す。
テレビで流れていた。
雑音がひどくて聞き取りにくかった。
こどもの声は棒読みだった。
意味が分からず、言わされている感じだったな。

犯人側の「こども」目線で探るグリコ・森永事件
感情移入して、ページをめくる手が止まらない

テープの声は、自分の声だ。
だったら、テープを録音したのは誰？
お父さん？お母さん？
それとも・・・？

罪の声は、主人公が疑心暗鬼になるところから始まる。

自分もこどもの頃に引き戻されて、
すーっと感情が乗り移る。
どんどん話に引きこまれていく。

平成も終わる頃になって
「グリコ・森永事件の小説」って･･･
昔の昭和の事件を掘り起こして面白いんだろうか・・・と疑ってましたが、
予想以上に面白かった。

そして、実際の事件で声を利用された
「こどもたち」のことも気になる。

その後、無事に成人できたんだろうか。
犯罪に巻き込まれたり、
裏社会で生きているのではないだろうか。

当時のこどもたちも
生きているなら40代。
どんな人生を生きているのか。

いや生きていないんじゃないか・・・。

モヤモヤした気持ちは残ったままだ。

グリコ・森永事件の関連書籍を読み返したくなる

グリコ・森永事件について
小説・ノンフィクション、
いろいろ読んできた。

高村薫の「レディー･ジョーカー」では
犯人の狙いは身代金ではなかった。
株価操作による利益狙いだったという説が新鮮だった。